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中国3D放送/配信事情:Yu Wei(虞為)氏(Micro Animation 微動漫 会長)に聞く

世界的に3DTVの足踏みが続いているとの指摘が多い中、中国では2011年より3DTVの普及が進んでいる。2012年1月に発表された「2012年の3D放送開始の市場状況の調査研究報告」によると、2011年の薄型TV市場全体のニーズは3800万台、そのうち3DTVは800万台、市場シェアは21%としていたが、2012年の薄型TVのニーズが4200万台に拡大し、3DTV市場のニーズは2000万台、市場シェアは48%に達するとの予測になっている(人民網日本語版 2012年1月18日)。

また2012年1月には3Dの試験放送も開始されている。この3月に開催された東京国際アニメフェア2012に合わせて来日した中国のアニメーション制作会社「Micro Animation微動漫」会長、Yu Wei (虞為)氏の話を紹介する。

中国共産党は2011年10月に行われた第17期中央委員会第6回全体会議において、「文化体制改革を深めるという」新たな改革路線を打ち出しました。この新たな路線には、今後、経済成長の柱としてきた製造業と輸出産業が伸びないため、内需を刺激する新たなエンジンを起動させるという狙いがその背景としてあります。そして同年12月、中国国務院は「中華人民共和国映画産業促進法」という法律を公布しました。これは中国で文化産業の促進とコンテンツ・ビジネスに関する初の立法です。これまで中国では動画コンテンツ産業は国営TV局や映画製作社と出版社が独占してきましたが、この法律によって市場参入の制限を下げ、これまでよりも民間企業と資本がコンテンツ事業に参入することが活発になります(ニュース、中継放送を除く)。この法律は中国の映画産業を初めとするコンテンツ業界に非常に大きな影響を与えることになります。

2012年に開始された3Dの実験放送チャンネルに関しては専門家集団が必要であるとして、独占志向の強い中央電視台(China Central Television)CCTVでさえ、北京テレビ(Beijing TV)、上海メディアグループ(ShanGhai MeDia Group)、江蘇テレビ(Jiangsu TV)、天津テレビ(Tianjin TV)、深?テレビ(Shenzhen TV)の6つの地方局が共同で立ち上げることにしました。現在、3D専門チャンネルは上記一つですが、政府の計画として2015年までに10チャンネルまで増やしたいとしています。

3D放送の機材は日本のソニーとパナソニックのものが使われています。パナソニックは2012年のロンドンオリンピックの3D放送に向けて最新の機材・設備を納入することを発表しています。

時間は遡りますが、2007年6月、ソニーはハイビジョンのコンテンツ制作者を養成するためのソニーハイビジョン映画・テレビ技術学院を設立し、さらに本年1月の3D試験放送に先立ち、2011年12月26日、同学院に中国初の3Dテレビ番組制作研修センター「3D・4K 技術センター」を北京で開業し、中国でハイビジョンや3Dによる映像制作技術を学ぶ場を提供しています。しかし実際に放送されている3Dコンテンツの質の向上に貢献するにはまだ至っていません。この背景には、中国のTV局が外部から番組制作のノウハウを取り入れないという体質や、外資によるコンテンツ制作が禁止されているという事情があります。また、中国では中央政府と組むよりも、地方政府や製作プロダクションと一緒に仕事をするほうが自由に動くことが出来ます。

最近の中国ではTVを見るのは子供と高齢者で、モバイルインターネットの普及で若者のTV離れが進んでいますので、放送局の広告収入も減少しています。3Dコンテンツのインターネット配信に関しては、テレビによる視聴は可能ですが、3Dコンテンツの不足で半年経っても更新しない現状です。また、3DPCが普及していないので、見る人も少ないです。3Dに限らず、2Dのインターネット向けのコンテンツも不足しています。インターネット・コネクテッドTVもまだこれからです。

現在、最も期待されているのはモバイルインターネット配信のコンテンツです。2011年までに中国の携帯電話ユーザは9.8億、その内3Gユーザは1.28億で浸透率は僅か13%、工信部(総務省相当)の予測では2015年まで3Gユーザの浸透率は60%を超え、ユーザが5億に上る見込みですので、コンテンツで勝負するなら、モバイルユーザを狙うことでしょう。今回の東京国際アニメフェアに中国のキャリア各社が殺到してきたのもコンテンツ狩りのためです。また、3Dにおいてもこれから最も期待されているのは裸眼3D携帯用コンテンツです。

中国のインターネットで配信されている映像コンテンツも、アニメーションの質もまだ高いとは言えませんが、「中華人民共和国映画産業促進法」施行後、民間企業及び投資ファンドがコンテンツ制作に参入することによって、コンテンツの質が高くなることを期待でき、政治教育用ではなく本当に国民に楽しめられるようなコンテンツの創出を期待できることでしょう。

Yu Wei氏は、コンテンツ産業におけるコンテンツの質の重要性を何度も強調し、インタビューを終えた後、自社で制作した政治や経済など時事ネタを題材にしたアニメーションを見せてくれた。それらの作品では国際的な核問題や食料品の安全性等デリケートな話題が題材として取り上げられ、製作者の意図がはっきりと示されていたことに筆者は少なからず驚かされた。

中国の3D放送の立ち上がりに関しては、韓国LG Electronics製の3DTV、及びLG Displayが供給するFPR方式のパネルを採用した3DTVの急速な普及がその背景として挙げられる。放送される3Dコンテンツの質は今後向上していくと思われるが、すでに中国では3D映画がブームとなっており、3D放送においても目の肥えたユーザを満足させることが成功のカギとなる。

Micro Animation (微動漫)制作による時事アニメ
Micro Animation (微動漫)制作による時事アニメ