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3Dコンソーシアム 記念講演会 - 放送配信業者、3D映像制作各社の3D戦略 -

2011年2月18日、株式会社東芝本社 東芝ビルディングにて3Dコンソーシアム(3DC)平成23年度通常総会(3DC会員限定)が行われた後、同会場にて記念講演会(一般公開)が開催された。この記念講演会では「放送配信業者、3D映像制作各社の3D戦略」というテーマが掲げられ、3Dコンテンツを放送/配信する7つの業者、2つの3Dコンテンツの制作に携わる業者、1つの3Dコンテンツ配給業者という、総計10名の3Dビジネスに係わるキーパーソンが各社の実績・戦略について講演を行った。

今回登壇したほとんどの講演者が3Dの安全性について触れており、業界における3D映像の安全性に対する関心の高さが窺えた。それぞれの放送/配信業者は、3Dコンソーシアムの安全ガイドラインとは別に3D映像制作に関する独自の安全ガイドラインの作成をしているが、より質の高いガイドラインを作成するに十分な経験とノウハウを蓄積するためには、1社だけでなく複数の業者の経験を合わせることが必要であるという指摘が多く、それだけに、これほど多くの放送/配信/制作/配給業者が顔を合わせるというこの講演会は、今後の3D業界の発展のために非常に重要な機会を提供したと言える。

また、各講演の後には各社が制作/放送/配信した3Dコンテンツが上映され、2000年代の3Dブームにおける3Dコンテンツのレベルの高さをうかがわせていた。尚、当日の司会は3Dコンソーシアム運営事務局次長・宮澤篤氏(2011年4月より東京工芸大学・准教授就任)が務めた。

株式会社BS朝日/ 上田 直人 氏(編成制作局 編成制作部長)
演題 「日本初の3D音楽レギュラー番組“Panasonic 3D Music Studio”
〜放送までの経緯とその経験で学んだこと〜

BS朝日は2010年初めに社内で3D放送についての検討会を持った。その当時のスタッフには3Dについての基礎知識もなく、 3Dを知ることから始まったということである。その後パナソニックから3Dによる音楽番組の提案があり、 画質劣化が少ないBS放送で3D音楽レギュラー番組“Panasonic 3D Music Studio”が2010年11月に開始された。放送後の視聴者からは、 どうしたら3Dとして番組を視聴できるかという問い合わせが多く、2DTVで3D放送が視聴できると思っている視聴者が多いという指摘があり、 3D放送の視聴方法の周知は今後の課題であるとした。

株式会社BS-TBS/ 丹羽多聞 アンドリウ 氏(編成本部 事業部長 兼 統括プロデューサー)
演題 「BS-TBSの3Dへの取り組みについて」

TBSは2010年3月に開催されたファッションショー「春コレ」を全国数か所の劇場TOHOシネマズへ3D生配信、 同年8月に行われた「3Dサマーパーティー in 赤坂BLITZ」を、ホワイト・スペースを利用して地上波フルセグでの初の3D生中継、 2010年12月には3Dドラマ「ケータイ刑事 銭形結」を3D放送した(2011年1月1日J:COMで配信が開始)。 「3Dサマーパーティー in 赤坂BLITZ」は、3DTVを赤坂周辺の2か所に限りスタッフが見守るなかで番組が視聴されたためガイドラインを作成しなかったが、 「ケータイ刑事 銭形結」ではBS-TBS独自のガイドラインを作成、3Dの効果を出すため24分間の本編をワンシーンワンカットで撮影したとのエピソードを披露した。 「ケータイ刑事」は映画公開も予定されており、2Dのみで公開されるが、3DBDの発売も検討されているとのことである。

株式会社ビーエスフジ/ 中島 寛朗 氏(編成・報道局 編成部)
演題 「編成・企画・経営における3Dコンテンツへの期待とアレルギー
〜3Dレギュラー番組へのチャレンジ〜」

ビーエスフジは2011年1月より3Dレギュラー番組「3D★3D(サンデーサンデー)」を放送している。2010年秋にソニーからの3D番組についての提案があったが、 当初ビーエスフジの上層部には3Dに対するアレルギーが根強く、また3Dコンテンツの安全性、3D未対応の視聴者からのクレームが懸念された。 放送後の反響としては、多くの3DTVユーザは、普段(MVCフォーマットの)3DBDを見慣れておりサイド・バイ・サイド方式に対する設定に慣れていないせいか、 3DTVで3D放送をどのように視聴すればよいかという問い合わせが多かった。今後は3DTVのリモコン操作をすべてマニュアル化して、ユーザの問い合わせに対応するとしている。 視聴者から安全性に関してのクレームは少なく、社内の反応としては世代によって反応に差があり、年長者ほど飛び出しを強く感じるという指摘があった。

日本BS放送株式会社/ 磯部 なつみ 氏(編成・制作局 3Dディレクター)
演題 「BS11の3D放送への取り組み」

BS11は2007年12月の開局と同時に世界初の3D放送を開始している。2010年4月まではあらゆるジャンルの3Dコンテンツを制作していたが、2010年4月からは、 BSの視聴ニーズの高い紀行モノにテーマを絞っている。特に2010年5月〜6月に放送された「3D紀行 江ノ電で巡る湘南・鎌倉」は2010年12月に3DBDとして発売され (3D部分サイド・バイ・サイド方式)、予約完売するサイトもあった。またBS11は無料放送であるためにCMが重要であるが、3DCMは3D本編の間で、 2DCMは2D本編の間で放送を行う。2011年4月からは3D識別信号の送出を開始、3Dと2Dの切替りを自動化することでリモコン操作の煩雑さを解決し、 CMをスムーズに視聴できるようにするとしている。

スカパーJSAT株式会社/ 川上 知宏 氏(編成部 部長代行)
演題 「スカパー!3D放送の現在と未来」

スカパー!は2010年6月に3D放送を開始、初回放送累計時間(2011年2月18日現在)は約221時間、番組数は106である。 同社は有料多チャンネルとしての付加価値をつけていくのに3Dが魅力的であり、将来に向けて育てていくとしている。3Dを安全、魅力的なものにするためには放送局・ 制作会社の連携が必要であるという指摘を行った。また、3Dは見てみないとわからないとして、3DBD体験版無料配布(6000件の応募があった)、 プロ野球の巨人×阪神戦や競馬のジャパンカップ3D放送の体験イベントを行うなど、3Dの体験機会の拡大を図っている。

株式会社NHKメディアテクノロジー/ 出口 忠夫 氏(常務取締役 放送技術本部長 3D高精細センター制作技術部)
演題 「NHKメディアテクノロジーにおける3D取組状況と今後の展望」

同社は1989年に初の3D撮影を行って以来、多くの3Dコンテンツ制作の実績がある。2010年には92本の3Dコンテンツを制作(収録73本、生放送19本)、 初めて3Dコンテンツ制作において黒字決算となった。TV放送が衛星放送、ハイビジョン放送とその技術が進化するなかで、3D技術は必然的なものであると指摘。 また、安全性の研究の重要性を強調し、自社でのガイドライン作成・コンテンツ品質管理委員会などによって3Dコンテンツの安全性の確保に努めている。 しかし、特にマスコミからのバッシングは避けなければならないとして、総務省、NICT(情報通信研究機構)、URCF(超臨場感産学官フォーラム)、 放送事業者などが参加する「オールジャパン体制」での安全性への研究に取組み、国際3D協会(International 3D Society)の日本部会が、 3D専門家の育成、安全性の啓蒙など教育活動を目的として本年4月を目途に設立されるとの報告を行った。

日本テレビ放送網株式会社/ 岡部 智洋 氏(編成局編成戦略センター 編成担当副部長)
演題 「3Dコンテンツ制作への取組」

日本テレビにおける3Dコンテンツ戦略として

  1. 放送事業者の立場での3D展開(”TVの魅力向上”に向けた将来への投資/フルデジタル時代だからこその「3Dコンテンツ戦略」/地上波展開も見据えた「3波総合編成」での3Dコンテンツ編成)
  2. テレビ局の事業関連での3D展開(映画事業としての3D戦略/イベント事業としての3D戦略/ライツ事業としての3D戦略ほか)
  3. コンテンツメーカとしての事業展開(他放送媒体/他デバイスへのコンテンツサプライヤとしての3D戦略)

を挙げた。地上波での3D放送の課題としては、3DTVの普及率よりも3D放送へのニーズが重要であること、3D未対応視聴者への配慮などを挙げた。安全性に関しては、 他社との経験値の共有が必要であるとし、安全性対策の例として、巨人×阪神戦の3D放送中、イニング間に6回挿入された「3D放送視聴時のご注意」の画面を紹介した。

株式会社ジュピターテレコム/ 渡辺 一正 氏(商品戦略本部長 兼 放送事業戦略部長)
演題 「J:COMの3Dサービスについて」

J:COMは2010年4月、3Dサービスを開始、VODプラットフォームを活用した3D映像の配信を行っている。 同社の総世帯加入者数(2010年12月末)は343万、VOD対応STB数は約200万あり、そのうちVOD画面へのトップページへのアクセスは40%、 コンテンツ視聴(有料・無料含む)は30%、有料コンテンツ視聴は10%となっている。3Dのラインナップは約60タイトル、3D VODジャンル別視聴動向としてはグラビアアイドルが最も多いが、 趣味・教養(ディスカバリー、アニマルプラネット等)の人気も根強い。3Dのプロモーションとしては、VODでの無料3Dコンテンツ配信、全国のJ:COMショップすべてに3DTVを設置しデモを 行うなどの活動を行っている。安全性に関して現在特に大きなコールはない。

ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン/ 井上 倫明 氏(マーケティング シニア・マネージャー)
演題 「ディズニーの3D戦略」

ディズニーは劇場、パッケージ・メディア、放送・配信等あらゆるフォーマットで映画をユーザに提供している。 映画が3Dになることで得られる効果としては

  • 制作側にとって新たなクリエイティビティを生む
  • 映画鑑賞が今までとは異なる、より特別でイベント感のある体験となる
  • 映画業界にとっては市場拡大の機会

を挙げた。2010年に100億円の興行収入を超えた3作品は、どれも3Dの興行収入が全体の80%以上を記録している。 日本における3D対応スクリーン数は2014年には900に達すると見込んでいる (FRL注:2010年末現在、日本の3D対応スクリーンは700を超えている)。3DBD対応レコーダ/再生機の普及も進み、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンは3DBD作品のリリースを強化するとしている。

ステレオD, LLC/ 泉 邦昭 氏(共同設立者/最高技術責任者)
演題 「ハリウッド3D映画の魅力と進化 〜2D/3D変換ビジネスの現状と今後〜」

Stereo D社は2009年5月設立、2009年11月、ジェームズ・キャメロン監督にブラインドテストで認められ「AVATAR」でデビュー、 その後「ラストエアベンダー3D」など多くの3D映画における2D/3D変換の作業に携わり、現在250人体制で作業を行っている。 2010年公開された3D映画全米興行収入1位〜24位の作品のうち、6作品が全編2D/3D変換、5作品が部分変換によるものである。 2D/3D変換ビジネスの現状として、技術面では2D映像の各ピクセルをデプスマップに基づいてオルソシフトを行うが、元のピクセルになかった箇所をいかに作り出すかがポイントである。 メリットとしては3Dカメラで撮影するよりも見やすい3D映像が実現できる、従来のワークフローを変える必要がない、3D映像表現をポストプロダクションとして自由にコントロールできる、 過去の膨大な映像資産の3D化が可能、であることを挙げた。2D/3D変換に関しては制作スタッフ、観客によって評価が異なるが、他社も含めその技術のレベルは非常に上がっている。 最終的には3D表現としての付加価値を観客に認めてもらうことが重要であるとした。

以上