オンラインレポート

3Dコンソーシアム 【コンテンツ部会主催勉強会】

2010年6月18日、日本SGIホール(恵比寿ガーデンプレイスタワー地下1F)において3Dコンソーシアム【コンテンツ部会主催勉強会】が開催された。テーマは「3Dコンテンツの最新動向とそれを支える制作技術」

3Dコンテンツの重要性とその普及に向けて

この日の勉強会のポイントは

  1. 3Dコンテンツ制作・供給の現状とその問題点
  2. 良質の3Dコンテンツ制作のための環境の整備に向けて
  3. 未来の3D映像を表示するための技術

という3点にあったかと思われる。これら3つの観点からそれぞれの分野で活躍される5名の方々が3Dにかける熱い思いを語った。司会は北浦竜二氏(シャープ株式会社)が務め、また上記5名の講演に先立ち、主催者として3Dコンソーシアムコンテンツ部会の堀越力氏(株式会社NTTドコモ)より挨拶があった。

また、勉強会の最後に“「ショートショートフィルムフェスティバル」3Dプログラム”(2010年6月19日―6月27日、シネマート新宿)について、ルーセント・ピクチャーズエンタテインメント株式会社立体映像事業部プロデューサー・西雅太郎氏よりご紹介があった(日程紹介ウェブサイト)

大口 孝之 氏(立体映画研究家)
演題:「3Dコンテンツの動向」

3Dブームが本格化する中で、3DのテレビやBlu-ray再生機の話題は頻繁に報道されるが、コンテンツの話は後廻しになり、「ではそれで何を見るの?」という点が疑問のままになっている。その上で映画、放送、BDソフト、ゲームにおける3Dコンテンツの現状について紹介、現在の3Dコンテンツは、総じてスポーツに頼っていること、全体に家庭用コンテンツはハードに比べて動きが遅い。

3D映画:ハリウッドでは少なくとも2013年頃までは安定供給される見通しであるが、日本を含むアジア、欧州で定着するかどうかには疑問符がつく。

3Dテレビ放送: 日本、英国、米国、韓国、中国、オーストラリア、ベルギー、スペイン、ポルトガル、カタールにおける3D放送の現状の紹介。現在、3D放送は衛星放送、ケーブル、ネットTVが中心であり、地上波は慎重論が優勢であるが、韓国で2010年10月からKCC(韓国放送通信委員会)がMPEG-2によるLR2chを使った地上波3D試験放送を開始することは注目される。

Blu-ray3Dソフト: 3Dテレビを購入する際にバンドルしてBDソフトがユーザに サービスされる例はあるが、現時点においては国内では正式な映画のBlu-ray3D ソフトの発表はまだない(FRL注※1)。ただしアメリカやドイツなどでは、6月1日に 「くもりときどきミートボール」が発売された。日本国内における映画のBlu-ray3Dの タイトル告知解禁は7月1日を待たなければならない。

3Dゲームソフト: ソニー3Dブラビア購入者に対し、PS3専用3Dゲームソフト4つが無償提供される(FRL注※2)。

FRL注
※1 7月14日に音楽業界初の3Dプロモーションビデオ“水谷豊 人生ロマン派”が発売予定、エンコードはSide-by-Side方式
※2 ロサンゼルスで6月15日―17日に開催された“Electronic Entertainment Expo(E3)”ではニンテンドーから発売予定の”3DS“の詳細が明らかになり、ソフトの一部も紹介された。
町田 聡 氏 (コンテンツサービスプロデューサ)
演題:「3Dの本格普及に欠かせない人材育成と、これで良いのか3D製品プロモーション」

町田氏は、もし粗悪な3D映像が出回りユーザが3D映像に失望すると、3D映像市場が縮小してしまうという危険、 2Dと3Dでは多くの共通点も存在するが、むしろ両者は違うものであるという認識の重要性、問題のある3Dコンテンツ視聴環境として、特にアナグリフで粗悪なメガネが3Dパッケージメディアに添付されていた例、また品川駅で行われているソニーの3Dブラビアのデモでは、適切な視聴距離が設定されていなかったことを紹介した。

今後良質な3Dコンテンツの供給をしていくために、映像制作会社、テレビ局、CGプロダクション、ポストプロダクション等を対象とした3D映像制作基礎講座の提案、そして最後に3D映像の応用分野の一例としてデジタルサイネージを挙げ、デジタルサイネージで3Dを採用する目的、メガネ式3Dサイネージの特長と裸眼3Dサイネージの要件、裸眼3Dサイネージの最新動向について述べた。

鎌形 英一 氏(ルーセント・ピクチャーズエンタテインメント株式会社 代表取締役社長)
演題:3Dコンテンツにおける企画、製作への取り組み

同社はアニメーションをはじめとする映像コンテンツの企画、製作、ディストリビューションおよびライセンス処理などの業務を行っている。

3D映像制作に関しては、同社は独自の2D-3D変換技術を持ち、旧作を2D-3D変換するのではなく、新たに制作された2D作品を3Dに変換することに注力している。実際に3D映像制作に携わっている同社立体映像事業部プロデューサー・里慎一郎氏から、同社が行っている3D映像制作のワークフローが紹介され、充実したワークフローの重要性を強調した。また、海外では主流となっているCGアニメーションと戦うためには、日本のハンドアニメーションの良さを生かしていくとしている。

3Dコンテンツにおける同社の取り組みとして、

  • 海外展開〜3Dジャパニメーションの海外輸出
  • 新たな3Dコンテンツの訴求〜3D静止画のアート化展開
  • 異業種、産学連携による3Dコンテンツ発信
  • 3Dにおける新しいビジネス、サービスを展開
を挙げた。休憩時間には同社が制作した3D映像のデモ展示が会場にて行われた(JVC製偏光方式モニターによる)。
須藤 智明 氏(財団法人デジタルコンテンツ協会 事業開発本部 産業振興室長)
演題:「立体視(3D)映像技術の開発と普及活動」

同協会では、経済産業省の受託事業「平成21年度ITとサービスの融合による新市場創出促進事業(コンテンツ技術実証事業)の 一環として3D製作支援のための映像を体系化するという活動を行っている。その成果を元に制作された「3D制作支援のための映像集・解説集」 の紹介(3D映像はSide-by-Side 方式で収録されている)。また、ソニーPCL(株)、(株)オムニバス・ジャパン、パナソニック映像(株)との協力の下に行われている3D映像クリエイター向けセミナーを紹介した(当日は残念ながら、3Dによる表示は行われなかった)。

また、上記受託事業の成果の例として、生体反応計測の結果、

  1. 3D映像注視時に調節反応(ピント調節)が生じた
  2. 3D映像注視時に視機能訓練効果を認めた
  3. 3D映像注視時に脳血流変化が増大する

ことを認めた、という結果もあわせて紹介された。

村山 至 氏(株式会社NHKメディアテクノロジー 放送技術本部 営業推進部 チーフディレクター)
演題:「立体視(3D)映像技術の開発と普及活動」

同社では20年以上に亘って3D映像制作に取り組んできた。いよいよフルHDによる3D映像が供給される環境が整ってきたが、一方では粗悪な3D作品が広まることが懸念される。そういった状況のなかで、 情報通信研究機構(NICT)の企画により、「4K3D」映像が2010年2月完成された。撮影内容としては4K映像における3D効果についての検証、HD3Dと4K3Dの映像比較等が収録されている。 収録された4K 3D映像の評価は見る人に委ねるとしているが、HD3Dと4K3Dを比較すると、奥行き感が増すと言える。書割効果に関しては4K3Dの方が緩和されること、箱庭効果に関しては4Kの方が強調される、 などの点を指摘した(この講演においても3Dによる表示は行われなかった)。