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FPD International 2009 セッション レポート

2009年10月28日〜30日、パシフィコ横浜にてFPD International 2009が開催された。 ここでは会期中に行われた3D に関する2つのセッションをご紹介する。

3Dが家庭で普及するためのカギは?Blu-ray、放送・・・

10月28日のセッションでは「Blu-ray、デジタル放送、ネット配信―家庭に3D映像は入るのか」と題して、日本画質学会の麻倉怜士氏を座長として、コンシューマ市場における3D事業の今後について論議が行われた。

パナソニックの小塚雅之氏は、同社がBlu-dayディスクの重要なアプリケーションとして3D映画を推進していること、 家庭で見られる最高画質の3Dとしてフレーム・シーケンシャル表示方式(メガネはアクティブ・シャッター方式)を採用していることを強調した。さらに3Dのすばらしさをより多く知ってもらうために同社が日本・米国・欧州で展開している啓蒙活動、さらに3D Blu-rayオーサリングシステムの 開発など同社のハリウッド研究所での活動内容について報告があった。

ソニーの島津彰氏は、同社が今後展開する3D事業として、コンシューマ向けではTV、PC、ゲームの追及、業務用として放送・劇場用映画のシステム作りに注力していくと語った。 なお、同社のコンシューマ向けのTVも、フレーム・シーケンシャル表示方式を採用している。

日本BS放送(BS11)の磯部なつみ氏は、同社が世界最初の3D立体放送を始めた理由について、3D立体放送を第三の放送革命と見なし、後発のBS放送が差別化を図る方法として3D放送を開始したと述べた。なお、同社は放送インフラに改修の必要がないSide by Side方式を採用している。

上記3人の発表を受け、弊社ふじわらロスチャイルドリミテッドの松本郁夫は、英国のBskyB、韓国のSkyLifeが2010年に3D放送を開始する予定であること、その際には両社ともSide by Side方式を採用することを紹介した上で、家庭で3Dが普及するカギとしてBlu-rayディスクでの普及に加えて3Dテレビが3D放送に対応することの重要性を指摘した。そのためにはコンシューマ向け3Dテレビの方式として“マルチフォーマットテレビ(Multi-format TV)”が必要であるとした。

この後行われたスピーカ全員によるパネルディスカッションにおいて、パナソニックの小塚氏は初めて3D放送への対応について言及し「家庭での3Dテレビが放送を受けないという選択はない」と語った。ソニーの島津氏も同様の意思表明をした。両氏の発言を受け、 家庭での3Dテレビのメインストリームはマルチフォーマットテレビということになり、今後は各フォーマットへの画質対応が次の議論となると思われる。

パネルディスカッション中の小塚氏と島津氏
パネルディスカッション中の小塚氏(左)と島津氏
日本で3D映画が成功するためには?

ハリウッドや日本の家電業界では3Dがブームとなっているが、今後3D事業が本格的に立ち上がるための条件として、つねにコンテンツの充実が指摘されてきた。10月30日、「3Dシネマは映像業界のイノベーションか」と題して、3Dの最大のコンテンツ供給元である映画と、それを取り巻く日本市場の動向についてセッションが行われた。

まず座長を務める日本大学大学院法学研究科・客員教授の秋山雅和氏から、世界の経済情勢と比較して米国の映画業界はポジティブなイメージであり、3D映画は1本当たり2D映画の2〜4倍の売上げを出しているとの指摘があった。

映像クリエータ/ジャーナリストの大口孝之氏は、これまでの立体映画ブームの失敗の理由を、内容面では立体感を過剰に強調する陳腐な演出、技術面では映写機シンクロがずれる、 などの理由であるとし、最近巻き起こった3Dブームを一過性の流行に終わらせないためには、見やすく疲労の少ない鑑賞システムの開発、過去の名作を立体化することにより内容面での問題を払拭することなどが必要であると述べた。

リアルDの長谷亙二氏は、ハリウッドの3D映画の事業戦略においては、劇場公開の後エアライン、ホテルなどでの視聴、BD/DVDセル・レンタルなどのビジネスウィンドウを必要とし、そのためには3Dテレビが必要であると述べた。さらにコンシューマ市場への展望としては、ケーブル・衛星・IPTV・ブロードバンドなど媒体を問わない3D環境が整備されていく必要があるとした。また、同社の3D事業における産業用アプリケーションも紹介された。

東映の村松秀信氏は、3D映画の前提となる映画のデジタル化について述べた後、 同社のデジタル作品「仮面ライダーディケイド オールライダーVS大ショッカー/侍戦隊シンケンジャー銀幕版天下分け目の戦」 (2009年8月8日公開、「シンケンジャー」は3D版も公開)、「とびだす!3D東映アニメまつり」(10月3日公開)などについて紹介した。

ワーナー・マイカルの松本勲氏は、2005年「チキン・リトル」に始まる同社の3D映画の取り組みと実績を紹介し、特に2008年10月公開の「センター・オブ・ジ・アース」の成功、及び3Dの普及に向けた取り込みとして、短編映像などで構成した「エクスペリエンス」という3D映像の無料鑑賞会を行ってきたことなどを紹介した。また、字幕版3D作品である「ベオウルフ」(2007)、二本立て「ポケモン3D」(2008)の上映の際、観客の間で映像酔いなどの事故が全く起きていないことを強調した。

3Dは映画業界全体底上げの起爆剤になるか

パネルディスカッションでは、3Dが映画業界全体底上げの起爆剤になるかどうかについての議論が行われた。大口氏は今年の夏以降、鑑賞に耐える3D作品が出てきたと指摘し、数年後に作品のストックが出来上がれば家庭のテレビでも見たいと思うようになり、過去の繰り返しにはならないであろうと述べた。長谷氏は、家庭でのテレビの普及までにはまだ時間がかかるため、劇場で音楽やスポーツなどの3Dコンテンツの配信・公開が必要であるとした。その一方で、2009年夏に公開された「ボルト」「アイス・エイジ3 ティラノのおとしもの」など3D映画の興行成績が期待したほどではなかったこと、ハリウッドでヒットした作品が必ずしも日本でヒットしない状況等について指摘があった。しかし、長谷氏は新しい産業が始まるときにはつねにクリアすべき課題があり、クリエータたちは新しい表現手段を手に入れつつあり、3Dを見るのが当たり前になるような世界に着実に進んでいくと述べた。村松氏、松本氏は3Dを業界で盛り上げるために力を尽くしていきたいと述べた。特に松本氏は3Dの未来を信じ、お互いをコンペティターと思わず、啓蒙活動を展開したいとした。

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